PROGUIDE マイゾックス製品情報ガイド Vol.41
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543世界有数の大河であるナイル川。氾濫を繰り返すことにより育まれた肥沃な土地によって、古代エジプトは広大かつ高度な文明を形成してきた。しかし、問題は川の氾濫後に畑の境界が分からなくなってしまうことだった。そこで活躍したのが「縄張り師」という測量専門家集団。彼らは12個の結び目を等間隔に作った縄を用いて、氾濫のたびに消えた土地の境界線を引き直す、まさに測量の仕事を担っていたという。縄での測量は円と直線が基本となり、この技術がコンパスでの作図を行う「幾何学※」分野の発展へと繋がっていくこととなる。※幾何学とは平面の上の点、直線、角、面など、図形や空間の性質を研究する数学の一分野のこと。紀元前の古代中国でも、測量技術は発展いんしていた。紀元前16世紀ごろの殷の時代には王の住む宮殿と役所を城壁で囲む形の都が造られており、紀元前2世紀の漢時代の墓からは、18万分の1の縮尺のほぼ正確な地図が発見されている。これには手掛かりになる一定の距離の格子「方格」を書いてから地物を示す「方格図」という手法が使われたといわれており、当時、既に地図の描き方や測量の技術が確立されていたことの証拠といえる。これらの技術は中国で生み出されたものと思われ、東西で独自の測量技術が発展していったと考えると興味深い。縄の結び目を使い「3:4:5」の直角三角形を作り測量を行う方法は、現在の「345の法則」と同じ。その後、「ピタゴラスの定理」が紀元前5世紀に提唱されることとなる。物の形や位置関係を示す測量技術の発展は、古代エジプトにおいて「大きな建造物を造ること」を可能にした。その代表ともいえるのがピラミッドである。クフ王の墓とされる「ギザの大ピラミッド」が建設されたのは紀元前2250年ごろだが、水準測定器や垂直測定器、定規などの道具が使用されていたことが分かっている。ピラミッドが、4000年後の現在まで残っていることは、当時の測量技術……土地をきちんと測り、石一つひとつを正確に積む技術が高かったことの証明ともいえる。この時代に培われた高度な技術は、のちの古代ローマの建築技術に発展し、現代へと繋がっていくこととなる。ⒸBenjamin Jiperus, 2012古代中国において何度も都城が置かれた都市・洛陽の唐代(618-907)の姿。既に整然とした都市を造る技術が確立されていたことが分かる。ピラミッドの凄いところ&使われている技術①底辺が東西南北に向く技術 ②積んだ石が崩れないように水平をつくる技術③側面が遠くから見て平面になる技術 ④上から見て正方形になるための技術①には星や太陽を使い東西南北を正確に測る天文測量の技術が、②や③には高さを正確に測って揃えたり、上面の差ができた時に修正する技術がすでにあったことが分かる。④も、それぞれの角が正確に直角となった建物を造ることができたということ。003現代測量の原点は、古代エジプト時代に遡ります。誰もが知る巨大ピラミッドの建築も測量技術の発展が可能にしたのです。測量専門家集団『縄張り師』の現代測量に通じる技術古代エジプトだけじゃない?高いレベルにあった古代中国の測量技術ピラミッドを造り上げた高度な測量&建築技術

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